inayamafumitaka’s official diary

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「アジャイルなチームをつくるふりかえりガイドブック」の刊行に寄せて

翔泳社から、森一樹さん単著『アジャイルなチームをつくるふりかえりガイドブック』が2月17日に刊行されます。

おめでとうございます!

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ふりかえりガイドブック

ところで、そのふりかえり本の左にあるコピー本は、ふりかえり本の原点になった、いわゆるコピー本です。そこから2年と半年くらいで、商業誌として発売されます。

自分のことの様に嬉しいです。

C94

ちょっとだけ、昔話です。コミケ、そうコミックマーケットC94は、2018年8月10日から12日の3日間の日程で開催されました。

東葛飾PM&A研究所は西館の壁の配置(シャッターではありません)されました。初壁でしたから嬉しかったことを覚えています。その夏の日は、とても暑かったです。館内に雲が発生すると揶揄されるくらいです。

追い討ちを描ける様に、配置された場所は、天井部分が前に出ていて冷房が当たらず熱気が籠り、その場所だけ、異世界の様でした。

たまたまノベルティで作った団扇が役に立ったのが誤算でした。

委託販売 

コピー本は、開催日の数日前、秋葉原キンコーズでコピー本を印刷してもらい、大事に受け取って、会場に持ち込んだのです。

部数は20部だったでしょうか。

このときから、森さんのふりかえり本をご指名でサークルまで来られた方が何名もいました。

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左手前のコピー本

コピー本の委託を受けて、東葛飾PM&A研究所で頒布するのは2回目です。1作目はNEKOGETさんの本、森さんの本で2冊目。

委託を受けると、自分の新刊より紹介してたりします。時間を割いて、丹念に思いを綴った作品を全部届けたいって強く思うんです。相談に乗ったり、一緒にキンコーズに行ったり、ご飯を食べたり、思いを聞いたリ、聞いてもらったり。一緒に時間を過ごす。そうした経験も思いを強くしているのかもしれせん。

スタートはコピー本

「完売しましたー!」

サークル主なら、言いたいセリフです。リソースをやりくりして、形にした本が全て読者の手に渡る。ジャケ買いかもしれないし、タイトルに引かれたからかもしれません。著者と会話して『買っても良いかな?』と思ったかもしれません。

もしかしたら出会えなかった世界に20冊しかない本が2019年の夏に読者に届きました。

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完売です!

それから2年半。

良い本が出来上がりました。

森さんの技術同人誌は、自称「鈍器」です。薄い本は全く薄くないです。それは商業誌になっても同じです。ここまで続くと薄い本はもう書けないですね、読者が期待するので。

本を手に取ると、先に裏表紙を捲るんですね。奥付を見るんです。それでもう1枚捲ると321ページとある。つまり表紙を入れると326ページ。

翔泳社版のふりかえり本は、紙質が薄いんです。軽くてしなるから、ページを広げるとき、見やすい。でも、そこを狙ったのではなく、326ページもある厚さを薄くしようとしたのではないか、となんとくなく思ったのですが。

翔泳社版の原稿をレビューする機会をいただいて、レビューさせてもらいました。ちょうど、Dead or Agile3の執筆時期と被りましたが貴重な経験になりました。

techbookfest.org

レビューは生原稿だけしたから『あの原稿がこうなったのか!』と思うと思いもひとしおです。

ふりかえりガイドブックを積読にしない

この本は、実務で使ってこそ価値を発揮します。それは、個人であっても、チームであっても、実務で使うことに意味があります。

だから、もし手に入れたら(手に入れましょう。できれば紙をお勧めします。気になったところに小さな付箋をたくさんつけて)、いつも手の届くところに置いておきたい、そんな本です。

そして、手にしたら、その日のうちに目次だけでもパラパラとめくってみてください。目次の標題で気になったら(そのページに移って斜め読みでも良いです)、さっと目を通してみてください。

ほら、もう、価値の一つを手に入れたのです。もし、困ったシチュエーションになったとき、おかしいなと違和感に引っ掛かったとき、この本に戻ってこれます。

ふりかえり本というサクセスストーリ

技術同人誌から商業誌を単著で書くなんて、すごいですね。もちろん、その前後にふりかえりのプラクティスがたくさんあって、それは良いものだから現場で困っている人に伝えて、同じ様に良い方向に進んで欲しい。そんな思いを積み重ねて、活動を続けてきた1つの事例です。

それは稀有なことなのでしょうか。

そうは思いません。

今は、技術同人誌から商業誌として世の中に出すパスができています。例えばこの本も技術同人誌から商業誌になった本です。

www.amazon.co.jp

思いがあるなら、思いをそのままにしない。

薄い本にしましょう。たくさん、小さな失敗をして(しなくて済む失敗はしなくても良いですよ)薄い本を書いてみましょう。

本を書くことは大変なことだからと躊躇するなら、ブログに思いを書いて、それを再編集するのはどうでしょう。

その思いはこんなステップで、薄い本の形に変えていきましょう。

  1. 目次を考えてみる
  2. 原稿用紙1枚くらいで良いから書いてみる
  3. 目次の書きたいところから書いてみる
  4. 決まったサイクルで書いてみる

書き出してみると『あれ、こんなこと書きたかったんだっけ』と思うかもしれません。でも良いんです。それは書いてみて、書きたかったことがわかったのですから。

もし、どうして良いかわからなかったら、Twitterで聞いてください。ベストエフォートになりますが、知っていることはこうかもと何かしら応えられるかもしれません。私の周囲にいるたくさんの同人誌を書いているエンジニアが寄って集ってサポートしてくれるでしょう。

あと、#推しの技術同人誌 に参加されても良いかもしれません。普段は技術同人誌を森さんと私で紹介する番組ですが、相談の場にしても良いかもしれません。

次はあなたがバトンを受け取ってくださいませんか。

 

 

 

 

 

 

在宅勤務になってから2020年に買ったもの

2020年1月27日から在宅勤務、それもフルリモートになってから買ったものを共有しようと思います。

在宅勤務になって、色々と添えるときに思ったのは、できる限り国産をメーカーのダイレクトサイトか国内ECで買おうということです。大変なのは、どこも一緒ですが、このコロナが収束したとき、国内メーカーが残っていなかったら、それはどうかなと思うのです。

今回、書籍は載せていませんが、基本は紀伊国屋書店webサイトか近所の紀伊国屋書店で買うようにしています。

ほぼ一年になる、皆さんの在宅勤務でのQOLの一助になれば嬉しいです。

 

 

ディスプレイ

direct.eizo.co.jp

最初に買ったのはディスプレイ。HDの三菱のディスプレイはあったけど、大きいサイズが欲しかったのと4kならたくさんブワウザを開けるだろうと。

とは言え、そこそこの値段だし4kはフォントがとか書き込みを見て意図がわからなかったり、 surface専用モデルとか書いてあったりしたので、メーカのサポートへ問い合わせた。結果、これが良かったので。その問い合わせで割引クーポンが貰えて、価格的にヨドバシとどっこいどっこいになったのでお買い上げ。

4kはフォントが…使ってみたら意味がわかった。1/4になるわけだ。文字も画像も。なるほど。ブラウザを縦に目一杯広げて、ジョブカン申請の承認をするのには便利ですね。

 

椅子

www.tanita.co.jp

SLIQを買う前に、少しだけ、ほんの少しだけジムボールで仕事をしてみたんだけど、合わなくてそのままオブジェに。

 

www.steelcase.com

椅子は暫くバランスチェアや折り畳みの木製の椅子を使っていた。バランスチェアは、膝に痛みが出て(原因は別にあるが診断結果では結局不明)、古い折り畳みの木製の椅子に反発するクッションを敷いて使っていたけど、どうにも姿勢がよろしくなくて疲れる。夏も過ぎた頃、いよいよ無理となって大塚家具へ。今思えば、匠の方が良かったのではと思うけど過ぎたことなので。大塚家具はすっかりヤマダ電機に取り込まれていましたね。

 有明なら実物があるだろうと予約して行ったら、実物がない。そこで聞いたら新宿なら在庫もあると聞いて車を回して直行。10種類くらい座って、比べて、SLIQ(アームレストつき)。

デザインに惚れたのはあるけど、ほら、アーロンとかのアームレストって調整できるじゃないですか。あれ、逆に変に動いて合わないな、と。

在庫あるっていうから新宿まで行ったのに、実際はメーカから直送。すぐに来ない。約2週間かな。

そのうえ、納品された椅子が不良品。調整した座面、座るとすーっとさがる。ガス抜けているのだろうな。ほんと面倒くさい。面倒くさいけど手続きしないと良品にならないので、動画を取った上で、大塚へ連絡。大層丁寧に応対いただいて、また2週間程度待って交換。その場で座ってガス抜けないことを確認して完了。

いや、椅子は合うもの、気に入ったものを買いましょう。素晴らしい。

 

Webカメラ

www.logicool.co.jp

これは勢いで買った(予約した)ものです。PCのカメラだと座る方向に合わせられないので良いです。google wifiのAPの上に置いて使っています。

 

イヤフォン

www.apple.com

会社の人からQOL上がると聞いていて、ほんとかなと思って。でもPCについているじゃん、と思いつつ勢いでポチる。

音質はSUREの方が好きだけど、フルワイヤレスは便利。ときどき、BTが切れることあるけど。


エアコン

panasonic.jp

作業場に使う部屋にエアコンをつけていなかったので、暑くなる前に。ヨドバシ、webページと店頭だと安く売っている機種が違うんだよね。店頭の場合、期間を設定して割り引いている機種がある。

リビングと同じダイキンを買うかなと思って値段を見ていたけど、微妙に高い。パナに。これで暑い初夏を快適に仕事できました。

なお、今の冬季はオイルヒーターで過ごしているのですわ。ほんわか暖かくて喉に優しいので。

そうそう、エアコンって量販店の10年保証ってあるじゃない。リビングのエアコンが不調になったとき、それの保証内容の広さ(柔軟さ)をある人から教えてもらって、次からKデンキで買おうと思ったのでした。


電気ケトル

item.rakuten.co.jp

家族に電気ケトルを買ったら『あれ、南部鉄瓶で鉄分をとるって言ってたのに』と突っ込まれた。

便利だわ。お洒落だし。これは早く買えば良かった。


iPad Air

www.apple.com

ipad miniを持っていたけど、電書読むのに大きいサイズ欲しいな、ProはMac買うようなものだ、どうしたものかと思っていたら新世代のAIrが出たのでポチり。

pencil、第2世代しか使えないのか…やむなし。ポチり。

miniの軽さは良いけど、電書読むならAirですねー。


apple music

www.apple.com

仕事の邪魔をしないけど、気分でフュージョンやジャズなんか聴くこともある。ない頭を振り絞って考えるときは聴かない。おすすめは村松健松岡直也

一番聴いているのは車の中かも。ライブラリに登録するだけで、ストリーミングをBTで繋いで。一番長距離は、自宅から舞鶴、奥伊根の往復。

Sirに○○掛けてって言っても、3回くらい言わないと掛けてもらえないの。車の中で『もー』って何回も言ってた。


apple TV 4k

www.apple.com

新型コロナウイルスになって、増えたエンタメにオンライン開催のライブがある。髭danとかユニゾンとか。

それを観るとき、PCやタブレットをミラーして繋げるの簡単でいい。こういう体験、とても良い。

リビングで音楽を聞きたいとき、これで聞いちゃう。本当はステレオのCDで聞けばいいんだけど、apple musicで色々と聞き漁れるので。

 

Qi

www.belkin.com

Air Pods Proを買ったとき、充電にいよいよQii使うかーと思って買ったもの。今はiPhoneの充電ばかりしてる。

物理で繋がなくていいのは便利。

 

光回線

www.jcom.co.jp

在宅してたら、子どもとTV会議を2本被るとカクカクするので、あげるかーと。手順的に、プランを上げて、光にしないとダメだった。1GBにしたかな。

21時で、このくらい。

451.7

Mbps(ダウンロード)

556.3

Mbps(アップロード

 

HDD

www.iodata.jp

光に変えるとき、TVのプランも変えないといけないという。それは組み込みのSTBからchromeOSに変わって、色々とよくなったんだけど、HDDは3.0出ないとサポートされないというので置き換え。

 

レモネード 

www.marufukucoffeeten.co.jp

www.kaldi.co.jp

夏場も今も、レモネードを炭酸水で割って飲む。丸福は、近所の高島屋に夏場しか置かないらしく、そこからカルディに置き換え。

値段も半額くらい。味は丸福かなぁ。

 

ひげトリマー

www.braun.jp

2019年の年末に風邪を引いてそのまま髭を剃らず、このままいくかと思ってトリミング用に。

剃るのも面倒だけど、トリミングも面倒だけど剃り残しを気にしなくていいので若干楽。

 

低周波治療器

panasonic.jp

在宅勤務のよくないのって、終日ディスプレイを見ていること。これで目が痛くなる。目というか、目の奥の後頭部。

いやいや、この年になってまだ裸眼な方がおかしいのかもしれないけど。

在宅前、会社にマッサージのサービスがきてて、そこで使っていた低周波の機器がすごくよく効いて欲しいんだけど、医療器具だし、車買えるくらい高い。

OMRONとかと見比べて、こっちに。

これ、いいです。肩甲骨とか首筋とか。

 

乾燥除湿機

panasonic.jp

数年前に買った乾燥除湿機が働かなくなったので、代替え。室内干しでは必須ですね。梅雨場でも今の時期でもカラッと乾きます。

 

仕事部屋

子供の部屋をそのまま使ってる。

机は学習机だし、棚には本が置いていあるし。袖机がムービングで動くので外に出して、高さを机に合わせてディスプレイを設置。机の半分はPCで、半分はポストイットを貼ってある。

本当は、長机かL字の机にして広く使いたいけど、じゃあ学習机どうするの?となるので、そこまではいいやと、そのまま使っている。

部屋のクローゼットには、プロジェクトマネージャ保護者会のポロシャツを3つ下げてある。

suzuri.jp

さらに、クローゼットの中には、#推しの技術同人誌 で飲んでいるウイスキーが放送回数分残っている。ほぼ、1杯か2杯程度しか飲んでない。

 

まだ他にもありそうなんだけど、ざっと購入履歴を調べつつ、ピックアップしたので。

あと掛けそうなのは、買った本とか、かな。リクエストあれば。

そうそう、参考になった方は、技術同人誌をお求めていただけると嬉しいです。

techbookfest.org

共感(心理的安全性)と協働(モブワーク)の裏側で求められるwith corona時代の新しいプラクティス

発端はこのツイートの「アドバイスより共感」を見て、です

 

「アドバイスより共感」から、技術書典でここ数回増えているエンジニアの成長、チームスキルなどのソフトスキルのキーワードが幾つか頭の中で繋がりそうになったのでした

 

今の、それもwith coronaの世界線上で

 

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心理的安全性やモブワーク(これはcorona前からですが)、共感など、素材は個々にあって、それぞれで語られていた

 

でも、これって何か時流的な大きな潮目が変わっていて、その結果、断片的に見える事象に対する対処的なプラクティスなのではないか、という仮定が浮かんだのです

 

だとすれば、見えていない真因はなんだろう、と

 

では、その前はどうだったんだろう

 

集合研修、組織内の研修、OJT、OFFJTなどの場を画一的に設け、出来上がっているコンテンツ=業務で必要とした知識、技能を移転させていた。これは事業オーナサイド、つまり経営が事業継続、拡大の目的を達成するために生産のリソースを増強する目的でやっていた

 

with coronaの前から少しずつ、新しい世界線に移り始める(以降、wtih corona時代と記します)と、業務で必要とする知識や技能を詰め込むだけでは、事業目的を達成することができなくなってきた。その結果は平成の失敗の連続として記されてきたのかと

 

その前は、もっとひどいと言えば酷くて、背中を見せる=教えることをしない=習う、身に付ける側で見て盗め的だった。近代の前ですかね。いわゆる職人の世界。教える側にモチベーションがない。なぜなら、教える側も生き抜くだけで精一杯。今風に言えば、事業に極振りしたわけです。事業で儲けられるリソースを。だから後進育成なんてしない

 

with coronaでも研修あるよとか言いたいかもしれません。それはwith coronaの時代に前代の名残が残っている、もしくは、with coronaでも生き残るプラクティスだから。

 

with coronoの時代(念の為に補足しますが、ざっくりと1990後半以降、特に2010前半くらいには新しい時代の半分まで潮目の割合を超えたイメージです)、何をやっても目的を達成できない、計画が意味をなさない=解釈を変えて目的を達成したことにしたり、確実にできそうな目的しか立てないようになってきた

 

教える側が正解を知らない。だから呑気にやってられない。今まで、

 

背中を見て育つやつだけ生き残ればいい


幹部候補生として採用して(やっぱり)出世レースに押し込んで選抜

育つのを待ってられない

 

だから即戦力を実践のない学生まで経験を求める採用をしている。そうした世界にあるのは、事業もそうだし、いちエンジニアとしていかに生き残るかに対するプレッシャです

 

それに対応するプラクティスを探し歩いて得たものが、共感(=心理的安全性)であり、協働(=モブワーク)なのでは、と

 

それが正解のはずだったのに、with coronaでどちらも対面で行えなくなり、距離という新しい阻害要件が生じてしまった

 

世界線はまた新しい分岐を選んだ。ここから新しいプラクティス探しが始まるのではないか、と思ったのでした

『プロジェクト思考で行こう!~技術同人誌を作る技術』で技術同人誌を書きませんか

みなさん、こんにちは。

ツイッターなどのソーシャルネットワークで告知のとおり、インプレスR&Dから『 プロジェクト思考で行こう!~技術同人誌を作る技術』を本日、刊行しました。

これから技術同人誌を執筆してみたいと考えられている方や技術同人誌の段取りで困っている方など、技術同人誌に関わる方の制作進行の全般をサポートする書籍です。

本書は、技術書典7 (サークルスペース き26D )で頒布予定です。

 

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『プロジェクト思考で行こう!~技術同人誌を作る技術』表紙

本書は、技術書典5で頒布した『技術同人誌を制作するための技術体系*1』を底本として、(気持ち的にはほぼリライトして)加筆、修正しています。

さらに、底本では未公開の各種フォーマット類を利用できるように公開しています。

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底本『技術同人誌を製作するための技術体系』

新しく加筆したコンテンツに、技術同人誌を制作する工程を1枚のシートにまとめるチャートを導入しています。このチャートにより、制作進行でどのようなアクティビティをするかとか、決めごとを明文化しながら進められるようになりました。

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サンプル『技術同人誌の構想と企画』

 エンジニアであれば、ガントチャートPERT図で可視化しようと思いつくと想像しますが、企画以降の制作進行ではそれぞれのアクティビティが相互に関連するため、全体を表そうとすると関連を表す線がビジーになります。それを回避するために、関連を示す線の表記を止め、アクティビティのみとしました。

 

技術同人誌はぜひ、紙の本で発行して欲しいと思います。電子書籍であればインターネット上の電子書籍のプラットフォームなどで手軽に頒布しやすく、受発注業務や在庫管理などを考慮する必要がなくなります。一方、紙媒体の書籍は、コンテンツとしては同じながら、手にしたときの手触り、重量感、視覚として目に飛び込んでくる色合いなど、電子書籍では経験することができない良さを持っています。

 

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サンプル『技術同人誌の装丁』

 

本書は、紙媒体を制作する上で、必要となる基礎知識を底本である『技術同人誌を製作するための知識体系』から拡充し、解説しました。

本書の特徴は、技術同人誌の企画から頒布後の在庫管理や決算まで、技術同人誌をプロジェクトとして捉えたマネジメントシステムになっていることです。

 

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サンプル『技術同人誌のマーケティング

いくら技術的に素晴らしい技術同人誌を制作することができたとしても、想定する読者に届かなければ、執筆した想いを届けることは叶いません。本書では、技術同人誌を出すことをいかに想定する読者に知ってもらえるかについても、章を設けて取り扱っています。

みなさんの経験はみなさんのバリューです。そのバリューをみなさんの中だけに押しとどめておくと、それ以上に増えることはありません。そのバリューを言語化と図式化という表現に変換するプロセスを介して、新たなバリューを作りませんか。

すでに、底本となった『技術同人誌を製作するための知識体系』を参考に何冊もの技術同人誌が出されたと、著者の方からお知らせいただいています。

次は、みなさんの番です。本書がアシスト役となって、1冊でも多くの技術同人誌が世の中に頒布されることを願っています。

 

 

 

www.amazon.co.jp

*1:COMICZINで取り扱っています。 https://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=38079

【ご報告】SIerを退職しました。

平成に新卒でSE採用していただいたSIerは、3月15日を持って円満退職しました。

これは、いわゆる転職エントリというジャンルに相当するものです。

新しい職場では、コーポレートエンジニアリングチームのマネージャとして情報セキュリティを担当します。
引き続き、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。

facebookで繋がっている知己の方々へ【ご報告】したところ、みなさん寝耳に水だった様でしたが、多くの方からお祝いのメッセージをいただきました。ありがとうございます。

初出社日も翌朝になった前日にどんな服装で行けばいいのかとつぶやいたところ、お一人、察したらしくメッセをいただきました。『流石だな』と思った次第です。

 

さて、転職エントリというと、なぜ辞めたのかを知りたいのではないかと思うのですが、後ろ向きのところは全くないので困ったものです。

では、何を書き残そうか。そう思案したのですが、こんなことは書けそうです。

  • SIerを辞めた理由
  • エンジニアのキャリア
  • 家族の反応
  • 恒例の
  • フィードバック

 

Q どうしてSIerを辞めたんですか

転職先の候補の面談の場で何度か、

「どうして事業会社で働きたいのか」

と言う問い掛けがありました。

本心でもあったので、

『そちら側にいって経験したいことがある(意訳)』

と答えています。

SIerでプロジェクトマネジメントをやっていると、業務委託を受けた範囲でのプロジェクトマネジメントしかできません。PMBOKを読んだり、プロジェクトの書籍を読むなどするとプロジェクトとは、プロジェクトオーナのいる事業会社がプロジェクトの全てのリスクをコントロールしながら、トータルでマネジメントすることがわかります。それを経験するために、その一線を超えて事業会社の一員としてチャレンジしてみたい、と思ったのです。

Q エンジニアのキャリアをどう考えていますか

今、50代とちょっと過ぎたところです。定年は60歳として、雇用延長できたとすると、あと10年くらいのキャリアを継続することも選択肢としてはありました。転職を決断するときに参画していたプロジェクトも、流石に定年まで居られることはないでしょうし、さらにその先は、どんな業務の担当になるかは(将来の話なので)誰にもわかりません。

だったら、

『やってみたいことをやったらいいのでは』

と考えたのです。もちろん、やってみたいことは、向こう側に行くことです。

2015年にマイナビから技術商業誌で作家デビューをする以前から色々と書き散らしている中で、自分のポートフォリオを振り返る機会が何度かありました。今、改めてポートフォリオを眺めて見ると、自分にとってのエンジニアのピボットは、2003年3月のPMPの取得です。

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PMP

2003年の取得を起点として、自らの判断で進む方向の舵を切り、現在に至っています。ポートフォリオとしてエンジニアのキャリアを書き残しておくといいのではないかと思います。

業務経歴書があるじゃないかと思うかもしれませんが、あれ、プロジェクト名と1−2行の説明と適用技術しか情報が記載されていなかったりしませんか。プロジェクトで担ったロールやプロジェクトで活用したスキル、習得したスキルは書いたり書かなかったりかな、と。

採用側に回ると知りたいのは、どの様な立場を任せられるか、どの様なスキルとスキルレベルを持っているかを見極めしたいじゃないですか。自分に対して採用者としてキャリアをヒヤリングするつもりで残すといい訓練になると思います。お試しください。

まず、思った様にかけませんから。

Q 家族の反応はどうでしたか

ワイフも子ども達も『そうなんだ』くらいの反応だったかな。反対や再考を求める様なことは全くありませんでした。ポジティブなのか、パパのイシューだから、と思っていたのかは聞いていないので。どうなんだろう。

新天地に着任して、1週間経った夜にこんなことを聞かれたのですよ。

『騙されていない?男の人って、夢を実現できるなら給料いらないって言う人もいるけどお給料出るの』

笑いましたけど。まだもらっていないので出るかどうかはわかりませんが。

恒例の

ほしい物リスト  を置いておきます。こんなことができるのかー 

フィードバック

 プロジェクトマネジメントやエンジニアの育成、キャリア形成について話して欲しいなどリクエストがありましたら、facebbokかツイッターでご相談ください。

また、主宰しているプロジェクトマネージャ保護者会では、プロマネ育成のワークショップを提供しています。社内講座の一環としてご興味のありましたらご相談ください。

speakerdeck.com

直近では、3月27日のJaSST'19Tokyoの第1日目でJaSST向けにカスタマイズした『プロばこ4JaSST』をワークショップで体験できます。

サークル活動も継続して行う予定です。技術書典6(4月14日開催)では、『ガルパン仕事術6』のほか、エンジニアのキャリアに必要なスキルの伸長をテーマとした新刊を出したいと鋭意執筆中です。

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(仮)CareerChange

カバーイラストは、いつものりふぁさんのカワイイイラストです。中身もいつもどおりガチなので、表紙に騙されてください。

それでは、六本木で見かけたら声をかけてください。スイーツでも食べに行きましょう。

技術書典4 好天(晴れ!)も参加者(6380人)も想定外だった技術書典4サークル参加レポート

技術書典4では、当サークルへお立ち寄りくださりありがとうございました。お陰様で、閉場1時間前までは息つく間もないほどでした。

ガラス越しの明るさからもわかるとおり、4回目の技術書典で初めて晴天となりました(パチパチ)。

天気予報で晴れの予報がわかったときのTLのざわつきを見て、どれだけエンジニアはM属性が強いのかと思ったり、イベ主のひつじさんの祈りが通じたのかと思ったり。

 

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開場準備中のスタッフの勇姿

新刊の執筆はコミケドリブンと決めているのですが、今回はリーダーシップのスタイルの比較を書いてみようと思い立って、表紙も中のデザインもほんのテーマも新しい「サーバルちゃん・リーダーシップ」を書き下ろしました。

 

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サーバルちゃん・リーダシップ」は、リーダー、マネジメント、サーバントリーダシップの3つのリーダシップをカバンちゃんがジャパリ図書館で本を読みながら学ぶスタイルをとっています。

 

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新しい体裁

 

サーバルちゃん本は、紙の色も実験的な意味合いで変更しました。柔らかいクリーム色です。また、中のデザインもこれまでは違う全く新しいものです。

 

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余白ページでイラストレーターデビューです。入稿の際にマスターテンプレートの左右の取り違いのページを見つけていただいた(poplsさんありがとう)際に、直すついでに余白ページにツイッターに放流したイラストを差し込み、落丁でないことをわかるようにしました。

今回の技術書典でのみ、poplsさんのキャンペーンに乗って遊び紙を入れました。鶯色はサーバルちゃん本のみ、桃色はカワイイ本とガルパン本で今回増刷した分に配色しました。 

 

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遊び紙が入ったガルパン本は、5月6日「ぱんっあ☆ふぉー!15」で数量限定で頒布予定です。バルちゃん本は早々に完売しております。 

この他、遊び紙を入れた技術書典4版の「カワイイ後輩の育て方1〜4」は、3点が完売となりました。

 

技術書典1から持ち込んでいるマイナビ本は、お昼すぎには完売となりました。

 

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New Game!!に(背表紙が)アニメ化された効果でしょうか。いや思いっきり売り文句にしましたからですね。

  

設営中に改めて課題だと認識したことは、書籍の種類が多くなり、テーブルがいっぱいになってしまったことです。

下図は、閉場1時間前くらいのサークルスペースの様子です。これでは次の新刊が置けないですね。さてどうしよう。

 

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しかし、グッズ類はあまり関心がないようですね。アジャイル開発系のエンジニアの方には(バックプリントがネタ的にウケているようで)人気があるのですけれど。

技術書典4について

後半はイベントについて。

 

 

確か、6380人はサークル参加者500名以上も含めて、と閉場後に運営からアナウンスがあったかと。一般入場者が5800人越えとはお化けイベントになりました…。1回目の通運会館を思い出します。参加者数もお化けになりましたが、サークルも270サークルで過去最大数でした(正確な数字は運営の情報を)。

それに伴い、抽選から抽選漏れのサークルさんを見かけましたので、下地としては兆候だったのかもしれません。

運営について

 サークルスペースが入り口に近く、入場者の流れを感じやすかったのですが、入場制限の調整が上手だったのか、人の流れの強弱が緩やかで(でもずーと多いけど)絶えず流量があるように感じました。一定量で推移するのは主催者の流量制御が上手いから何だろうなと思います。

5000番以上は整理券の番号は手書きだったようで、主催者のキャパプラを超えたアクセス数(入場者数)だったと。整理券が紙媒体であることは、予測精度をある程度確保しないと(次に使い回し出来なので)処分するほかないので、難しいところだと思います。物理の調達を伴う点では、書籍の印刷と同じですね。

あ、これこそ、オンデマンド印刷をお願いすればいいのでは。

かんたんQR設計アプリの利用準備

運営からのサークル向けに事前にQRコードの値札を用意してくれるアナウンスがありましたが仕様が不明だったのでお品書きにQRコードを入れたシートを準備しました。

 

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QRコード付きお品書き

 

この形態だから誤読が多かった、のかもしれないなー。どーなんだろう。

利用実績

利用した所感です。当サークルでの頒布物数の割合で言えば、13%がQR決済でした。まずまずの利用率かと思います。オペレーション的には断然現金の方が早いですが、購入者別の頒布数はQRコードの方が多い傾向があります。

後払いの安心感もあってか、7割のアプリ利用者が2冊以上の書籍をお迎えされています。アプリ利用者の平均頒布数は4.4冊です。

  • 総頒布数に占めるアプリ利用の頒布数 13%
  • アプリ利用者平均頒布数 4.4冊

この辺の数字も継続的に採取すると興味深いかもしれません。

アプリについて

(無料ですし)合格点!下記に書いたとおり、モルモットになったのでテストにでも呼んでくれればよかったかなーと。

他のイベント(パンツァー☆フォーとか、コミケとか)でも使えるようになると超嬉しいです。

 

購入者の挙動について

ツイッターでも言及しましたが、複数の頒布物のQRコードを3点以上スキャンしたとき、画面に表示できる頒布物数が2つまでなので頒布物をどれだけスキャンしたかわかりにくいかったようです。

下の画像の赤丸に3点目があるがこの画面ではスクロールできないのです。

 

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3つ以上スキャンするとどこまで読んでいるのかわかりにくい

 

誤読スキャンしたまま決済画面に遷移して、予定外の頒布物があって慌てていたようです。あと、スキャンした頒布物の購入確定する画面で意図しない頒布物をキャンセルしようとしたが、0件にできずキャンセルしていたケースが数回ありました。

数量を0に出来れば良いと思いますができましたっけ。 

おまけ

 お陰様もありまして、欲しかったいくつものサークルさんの頒布物が閉場前1時間もない時間に回ってもほぼ全滅という…。サークルさんには良いことなのですけどー。

1冊だけ手に入れられた頒布物は子どもさんのお土産に。読むかなー。

 

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次は希望するサークルさんが全部入れる会場だと良いですね。関係者のみなさん、お疲れ様でした。

 

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プロジェクトマネジメント・インタビュー サイボウズ株式会社 天野様

「突撃!隣のプロジェクトマネジメント!!」第3回目は、kintoneでおなじみのサイボウズで開発チームのスクラムマスターをされている天野さんをお迎えして、どのようなプロジェクト運営をしているか、チーミングの特色スクラムマスターのあり方などについてお話いただくくことになりました。
まずは、天野さんについて。

profile

天野祐介さん
 グローバル開発本部 東京第2開発部 kintone開発チーム
 
 開発されているアプリ
  kintone https://kintone.cybozu.co.jp/
 

 
(あ)天野さん
(い)稲山
(も)森實
(り)森
グラフィック 高柳
撮影 野村
 

■天野さんのお仕事について

(い)天野さんのキャリアについて聞かせてください。
(あ)2009年にサイボウズにエンジニアとして新卒入社しました。入社してからずっとkintoneのエンジニアをしています。サイボウズでは1-2年くらいでプロジェクトチームのエンジニアはどこの役割でもやります。自分では、Webのフロントエンドをゴリゴリ書くのがやっていて楽しいと感じていました。それからはフロントエンドエンジニアと名乗って活動していました。
 

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(あ)2015年かな。チームのリーダーたちが昇進したり、組織体制が変わって僕がリーダーになった。そこから役割が変わったとき、チームリーダとしてチームを見たときに開発プロセスがヤバイ感触があったんです。作れば作るほど負債が増え、バグが増える。これはヤバイなと。
 それをどうにかしたいと思って始めたのがスクラムアジャイルサムライを読んでいたのでスクラムやってみよう、と。
(い)いつぐらいですか。
(あ)1年半~2年前くらいからスクラムに取り組み始めました。ここのところはチームにスクラムを導入したり、他のチームにスクラムのコーチに行ったりしていますね。最近では月一くらいのペースで開発サイドだけでなく営業や法務に対してもスクラムを教えています。最近はスクラムマスターアジャイルコーチとしての活動注力をしています。
(い)(スクラムを取りれたのは)最近なんですね。もっと前から取り組んでいる印象がありました。
(あ)そういわれることも多いですね。ホワイトな印象が世間にはあるのですが、そこは自分自身もギャップを感じていました。実は裏で疲弊しながら作っている…。
(い)スクラムの前はウォーターフォールでパッケージ開発をされていたのですか。
(あ)kintoneは3ヶ月サイクルで出荷までをやっています。ウォーターフォールの小さなプロジェクトが年間に4つある、というイメージですね。(3ヶ月で回していたので)不具合を直して頑張ろうとしているときに次のバージョンの見積もりも始まってしまい「次の地獄が始まる…」という感じでした。
(た)3ヶ月での開発は、次第にそうなっていったのですか。
(あ)最初から3ヶ月サイクルでやっていました。だんだん辛くなってきて、末期には間に合わなくて仕様書に書いてない機能は「不具合」として扱っていたこともありました。
 自分がチームリーダになって、リリース判定がどうとか、脆弱性検証はどうとか、エンジニア以外とコミュニケーションを取る必要が出てきて、非効率なやり取りが多いと感じていました。また、人間関係とかも…。
 サイボウズはチームワークを大事にしているけれど、我々のチームワークは酷いものだな、と。そこがキッカケです。サイボウズで働く以上、自分が一番チームワークに自覚的に動いていくべきだと思ったです。
 

スクラムとの出会い

(い)なぜそこでスクラムを。
(あ)何をすればいいかわからなかった。XPアジャイルサムライはエンジニアの一つの教養として読んではいました。だから、スクラムの存在は知っていました。
 良くない現場をどうする、というときに、アジャイルサムライがヒントになるのでは、と思って。
(た)アジャイルサムライすごい。
(あ)エンジニア観点で書かれているので、プログラマとしても読みやすかったです。当時はTDDとかテストを書くフレームワークも整備されていない状態で、どう品質を高めていくかについても興味がありました。
(い)やってみてどうでしたか。
(あ)やるまでが大変でした。そこは頑張ってコミュニケーションから始めて。でも、始めたときはすごく失敗をしました。
(い)会社が始まってからずっとウォーターフォールで開発をされていた。全員スクラムを知らないじゃないですか。まず何をしましたか。
(あ)ざっくり関係者でいくと、プログラマのチーム、上流にプロダクトマネージャが2−3人、QA(品質保証)チームの分担になっています。
 組織として別の人たちが同じプロダクト作りに関わっています。プロダクト作りに関わる別組織の人とのコミュニケーションが良くないと思ったので、一緒にランチをしたり、一緒にミーティングをしたり、「なにか手伝えることはありませんか」という遠回りなコミュニケーションから始めました。
 困ったときに席が離れていて相談しづらいときには、席を丸ごと移動して相談しやすい環境を作るなど、小さな成功体験を続けることで「敵ではない」という認識をもってもらった
 
  「チームとして良いプロダクトを作るために協力しあいたい」
 
 という理想を伝えました。
 

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 kintoneチームとして理想はなにか、を議論できるように関係者を集めて、理想を語る場を作ってきました。目指す場所は皆一緒、という認識を何ヶ月か掛けて作りました。
 そのころ、私がワークショップおじさんになって。付箋を貼ったりとか、最初は恥ずかしかった。ただ、それは後になって「やってよかった」と思っています。
 

■プロダクト開発について

(あ)グループウェアを作っている会社なので、部署横断でSNSで会話したり、という縦割りを超えてコミュニケーションすることに抵抗のない文化があったことも大きいと思います。
(い)企業のカルチャーですか。
(あ)僕のパーソナリティとして「苦手な人でも声を掛けよう」というのあったけど、企業のカルチャーが大きかったですね
(も)1つのプロダクトを作りに行くゴールが同じだから、というベースが合ったことも影響しましたか。
(あ)そうですね。特に、自分が相手を説得する、という感覚だと、相手を負かさないといけないという感覚が人にあると思うんです。以前、技術を導入しようとしたときにそうやって失敗したことがあったので、負かされる人がいると良くないと思いました。そういうことにならないように、解決する問題に同じ方向を向く、ということを意識していこうと思いました。
(も)「問題対私たち」を地でいっている感覚ですね
 

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(い)プロダクトを作るチームは何人くらいですか。
(あ)主に関わっているメンバーはプロダクトマネージャ3名、プログラマー12人、QA6人くらいです。正社員が数人、松山にいるメンバが5-6人でしょうか。
QAの作業計画を立てるメンバーが3人、別途5-6人くらいでやっています。
(い)全体でメンバーで25人くらいですか。
(あ)そうですね。スプリント計画は25人くらいでやっています。別ラインでプログラマが4人のチーム、2人のチームがあります。4人のチームはメンテチーム。障害があったときや、フレームワークを置き換えるときなど粛々とやってくれる屋台骨の重要なチームです。
 12人の方は新規チームで、それ以外のメンテやトラブルをやってくれるのがメンテチーム。メンテチームは足回りを固めることに意義を感じてくれている人たちが入ってくれている。プロダクションが始まるとそこを維持するために、他人のコードを読まなきゃいけない、クオリティもキープしないと。大変ですよね。割り込みがあるなかで、どう計画を達成していくかも大変。
(あ)新規のチームは12人になったので2つに分けているところです。去年は5人だったのですが新規で7名増えてしまった。そこで分割してしまうと経験者が2名しかいなかったので面倒見切れなくなってしまうので、今まで一緒にやっていました。ただ、それはそれでレビューがし辛いという問題もあったので分けようということに。
(い)コアチームの周りに営業などがいると思いますが規模はどのくらいになりますか。
(あ)ビジネスを考えたり、マーケティングを考えたり、という人たちを含めると3桁になるかも。案件をSIする人たちもいます。特定業界向けにkintoneの使い方を考えている人もいます。
 

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(た)組織の変更は柔軟ですか。
(あ)開発系の組織は若い人が重要なポジションにいるので柔軟さが出てきたな、というイメージがあります。
(い)天野さんの役割は。
(あ)マネージャとしての権限はないです。kintoneはチームとしては大きいので、リーダが3人。
プログラマの中に3人。僕はそのうちの1人です。1on1などある程度役割は委譲されていますが、評価したり、給与出したりという部分はリーダではなくマネージャの役割です。
 最近スクラムを始めて、リーダというのもいらないよね、とう風潮になってきています。
 

■チームの価値観について

(い)コレは大事、というポリシーはありますか。
)プロダクトを良い物にするんだ、という意識は妥協したくないと思っています。スクラムを始めたときも、プロダクトをとにかく良くしたいという思いがありました。自分のプロダクトはバグだらけではなく、最高でなくてはならないし、いがみ合っていてはダメです。
 そういった意味でサイボウズの中では成果を求めると言う点では厳しい面があります。
(い)チームのメンバーとの価値観はあっていますか。
(あ)価値観は合っているとは思います。ただ、確認しているかというと意識的には活動していません。サイボウズには、仕事Barいう制度があり、飲み食いしながら仕事をしてもいい制度があります。それを頻繁に使って、直近のふりかえりや「こういうようにしたい」というのを語る、というのをやっています。
(も)コミュニケーションが価値観を近づけることに繋がっていますか。それとも似た価値観を持っている人を集めているのですか。
(あ)そこに共感してくれそうな人をメンバーに入れています。入ってくれたら、何に向かっていけるかを近づけていきます。透明性のあるコミュニケーションが大事だよ、とか。
 去年新人が入った後の仕事Barで、HRTの原則を話したり、など。
(い)チームの中での暗黙のルールや目指すものを定期的にインストールしていないと流されてしまいがちですよね
(あ)社内のkintoneをtwitterのように使っていて、仕事をしながらつぶやいています。あと、社内にポエムを良く書いています(笑)。
 日報に書くこと、つぶやきやfacebookに書くときなど、会議で発言していない人がいれば「発言できない空気にしているのが悪い」とか「相手を尊重することが大事だよ」とか「ミーティング中にPCを見ていると良くないよ」とか内職をさせてしまう会議の進め方に問題があるよねとか。
思っていても、なかなか言えないことを三者の視点のように言っています。
 

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(あ)ミーティング中にPCを見るな、だと否定される気になりますがポエムだと個人攻撃ではなく「読みたい人は読んでね」という柔らかい感じになるので定期的に発信しています。
(た)文化的に直接指導する感覚がありますか。それとも、誰も言わない雰囲気がありますか。
(あ)良くないことを昔は黙っている空気がありました。目立って対立するのではなく、柔らかく当たっていくコミュニケーションを取る風潮かと。鋭く議論を戦わせてもいいのでは、と思うこともあります。
(た)関係性の成熟度も影響があるかもしれません。
(あ)個人の好みもあり、激しい議論が好きではないのかも。
 

■これからについて

(い)個人のコミュニケーションもハード<ソフトだというのが分かりました。スクラムでリーダシップが突出した人がいなくなっていく。それは組織として考えたときに、天野さんとしては次どうしていこうと考えていますか。次世代を育てるということを考えたことは。
(あ)あまり考えたことはありません。スクラムマスターやりたい、という人にはコーチングという形でお手伝いをしています。チーム内の役割として、自分はなくなりたいと考えています。自分に依存する状態をすぐに無くしたい。
 その点では、良く休むし、席も意識的に外したり、ということもしています。自然と天野がいないから朝会ファシリテートしよう、と自分がないなりにしてくれています。居ないことが普通になれば、誰かがやってくれる。
 自分のチームではスクラムを2-3チームで上手く回れるようにしたいと思っているが、それが終わったらスクラムマスターは抜けて別の役割をしたいと思っています。
 

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 イベントで居なくなるということも多いですが、有給を月2回、年間100%取るようにしています。リーダが取るとメンバーが有給を取りやすくなったり、リーダが早く帰るとメンバーも早く帰りやすなったりするので
(た)スクラムマスターは必要だから自分が担ったのですか。それとも、ミッションやライフワークのどちらでしょうか。
(あ)プロダクトを良くしたいからスクラムをやるスクラムをやるにはスクラムマスターが必要。だったら、やるなら僕、というロジックです。
(た)それは天野さん自身が責任感が強いからですか。
(あ)まずは自分がやる。自分の責任でやるから好きにやる。結果、クビになるならいい、という気持ちでやっています。Team Geekという本の中に、「正しいことをしてクビになるのを待とう」というフレーズがありそれが良いなと思っています。やるべきことをやって結果が出ればいい。それで他社に行っても問題ないと思っています。自律した状態は持っていたいので、会社に雇用されているという状況をなくしてもいいのではと思うこともあります。
(も)自分が独立したときに同じ金額で発注してもらえるかを考えよう、という考え方に近いですね。組織は職能で分かれています。小さいチームから大きなチームまで、プロダクトを作ると言うことは「儲ける」ということに繋がらないといけない。開発チームであれ、市場価値にコミットしないといけない。SIerだとモノを作ることが仕事になってしまうと、価値観が欠落しやすいのですが、チームにそれを意識させる仕掛けをしていますか。
(あ)僕も課題だと思っています。エンジニアに数字に貢献したと感じさせることは難しいです。ビジネスのPMがいて、顧客の意見を集めたりビジネス側からフィードバックしてくれる人がいる。その人から市場の中でプロダクトの売り上げやユーザーの伸びなどを共有してくれる場を活用しています。エンジニアは数字を出すのではなく、PMが正しい数字を出すために取り組む、という感覚かもしれませんが
 

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(い)次世代の方に話を戻すと、マネージャPMは人気がないと言われています。数字にコミットしているので、ちょっと失敗すると叩かれてしまう。そうした中でスクラムマスターをやってみたいという人が出てくるのはすごいな、と思います。サイボウズには何かあるのでしょうか。
(あ)サイボウズの文化があるのかもしれません。最近は、入社前の学生でもスクラムマスターをやりたいという人もいます。面談前にスクラムマスターをやりたいと言ってくれる人もいます。
 スクラムマスターはチームワークをカイゼンする人です。サイボウズチームワークあふれ社会を創る」というミッションがあります。サイボウズの理念に共感しているのかもしれませんね
 
(い)自社のプロダクトを持っていることがバックグラウンドとして強く寄与しているように感じます
(あ)よく言われます。
(た)プロダクトがあることでフォーカスしやす自社の事業に誇りを持つことに繋がっていると。
(も)みんなに同じ目的のある愛が芽生えるのですね
(あ)価値判断がなくて仲良くなると、誰も決定をしなくなります。大きい目的があって、健全な衝突があって、向かっていくための規律があって、その規律をもたらすのもスクラムマスターの大事な役割かと。
 

■コミュニティについて

(り)社外コミュニティで講演しているときのモチベーションは。
(あ)自分が苦労したことは、他人も同じだと思っています。オープンソースにコミットしているのと近いかもしれません。ちょっとでも返していくのが必要かな、と。
 結局プロダクトが作りたいのだと思います。それがやりたくて今までやって来たのがある。最近はコミュニティにも出ていて色々と話をさせていただく機会は多いですが、ことさら注目されるようなことはやっている意識はありません。必要だと思ってやっているだけ、という気持ちです。
(い)天野さんの普通はみんなの普通じゃないのかもしれません。そのギャップがみんなから興味を惹きつけている。そこが光って見えている。
(あ)そこを含めてサイボウズに興味を持ってくれる人がいれば嬉しいです。是非サイボウズに転職していただければと思います。
 

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